辿りつく詩
[第九巻 883頁]
盲目の詩人 Lunaは静かに唇を開いた…
これより歌うは...ある娘が 大切なモノに辿りつく迄の詩
苛酷な旅よ 困難な途よ それでも娘は決して諦めなかった
物語は運命を呪うより 苦しくとも詩い続ける途を選ぶ
いづれ歴史が全てを葬りさろうとも 今は唯...瞳を閉じて聴いておくれ…
愛しい人よ アナタは何処に
手掛かりひとつなく
孤独な旅の 道連れの詩は
遠い空へ 霞んで消えた
天堕つる雨 手の平に
零れ落ちた雫(なみだ)…
幾つもの深い森を抜けて 険しい山を越え
町から街へ 知人(ひと)から他人(ひと)へと
想い人を 尋ね歩いた
天翔ける追想(ゆめ) 星空に
誓った接吻(やくそく)は…
[嗚呼...Endymio…]
虚ろな世界を 夕闇が包み込む
帰れぬ私は 独り何処へ往く
予言書が肯定する史実 争いの歴史
戦禍という名の爪痕 大地を灼き尽くす焔
家族...恋人...愛する者の消息も知れず
多くの者達が為す術もなく引き裂かれた時代
娘の旅は 道連れとなった詩を遡るように
とある城で牢番をしていたと言う男へ
そして...推測から確信へと辿りついてしまった
切なくも懐かしき調べ その詩を綴ったのは…
挫けそうな私をいつも支えてくれたのは
恋人(あなた)が最期に遺してくれた この名も無き詩よ
「運命よ...例えお前が瞳から光を奪い去ろうとも
この唇からは詩を奪えない…」
辿りつく詩は 夕闇に陽を灯し
枯れてなお花は 凛と其処に咲く
嗚呼...吹き荒れる悲しみの…
嵐が訪れ 全て薙ぎ倒しても
大切なモノは 絶えず此処に在る
[{大切な人に 辿りつく詩}]
[{大切な者に 辿りつく詩}]
君よ...大切なモノに辿りつく途を見つけたら もう迷うことなかれ
[{大切な人に 辿りつく詩}]
[{大切な者に 辿りつく詩}]
例え茨の途であろうとも 歌をくちずさめばそれもまた楽し
[{大切な人に 辿りつく詩}]
[{大切な者に 辿りつく詩}]
詩えない人生になど 意味はないのだから…
[{大切な人に 辿りつく詩}]
[{大切な者に 辿りつく詩}]
大切なモノへと...辿りつく場所へと...
白鴉が目指す地平...あの空の向こうへ...