Sacrifice
[彼女こそ...私のElysなのだろうか…]
(Sacrifice, Sacrifice, ah... Sacrifice, Sacrifice, ah...)
無邪気な笑顔が 愛らしい妹は
神に愛されたから 生まれつき幸福(しあわせ)だった
一人では何も 出来ない可愛い天使
誰からも愛される 彼女が妬ましかった
器量の悪い私を 憐れみないでよ…
「──惨めな思いにさせる 妹(あのこ)なんて死んじゃえば良いのに...」
(Sacrifice, Sacrifice, ah... Sacrifice, Sacrifice, ah...)
あくる日妹は 高熱を出して寝込んだ
ごめんなさい神様 あの願いは嘘なんです
懺悔が届いたのか やがて熱は下がった
けれど今度は母が 病の淵に倒れた
母が今際の時に遺した言葉は…
「──妹(あのこ)は他人(ひと)とは違うから お姉ちゃん(あなた)が助けてあげてね...」
(Sacrifice, Sacrifice, ah... Sacrifice, Sacrifice, ah...)
母が亡くなって 暮らしにも変化が訪れ
生きる為に私は 朝な夕な働いた
村の男達は 優しくしてくれたけど
村の女達は 次第に冷たくなっていった
貧しい暮らしだったけど 温もりがあった…
「──肩を寄せ合い生きてた それなりに幸福(しあわせ)だった...」
それなのにどうして...こんな残酷な仕打ちを...教えて神様!
妹(あのこ)が授かった子は 主が遣わし給うた 神の御子ではないのでしょうか?
──妹が子供を身篭もっていることが発覚した夜
村の男達は互いに顔を見合わせ口を噤んだ
重い静寂を引き裂いたのは耳を疑うような派手な打音
仕立屋の若女将が妹の頬を張り飛ばした音…
[泥棒猫...可哀想な子だと...世話を焼いて...恩知らず...]
──断片的な記憶...断罪的な罵声...
嗚呼...この女(ひと)は何を喚いているんだろう? 気持ち悪い
ぐらりと世界が揺れ 私は弾け飛ぶように若女将に掴みかかっていた…
緋く染まった視界 苦い土と錆びの味 頭上を飛び交う口論 神父様の怒声
[純潔の...悪魔の契り...災いの種...マリア様の...誰もガブリエルと...火炙りだ...]
[嗚呼...悪魔とはお前達のことだ!]
──そして...妹は最後に「ありがとう」と言った...
心無い言葉 心無い仕打ちが どれ程あの娘を傷付けただろう
それでも全てを...優しい娘だから...全てを赦すのでしょうね...
[でも...私は絶対赦さないからね……]
[この世は所詮...楽園の代用品でしかないのなら...罪深きものは全て...等しく灰に帰るが良い……]
──裸足の娘 凍りつくような微笑を浮かべ
揺らめく焔 その闇の向こうに『仮面の男』を見ていた──